手を挙げなくなった。あの頃の自分。
小さい頃学校ではよく手を挙げる子どもだった。
授業などでは人目もはばからずに我先にと手を挙げていた。
いつからか手を挙げなくなった。
羞恥心か恐怖心か怠惰か。
自分でも気づかないうちに、驚くほど自然にその積極性は失われていた。
大人になってから回顧する。
全学年が集まった体育館でのなんらかの発表会、あの時か。
もしくはあの授業中の奴の一言のせいか。
はたまたあの頃の担任のせいか。
思い当たる節はあれどどうにもしっくりこない。
他責思考をやめて思い返すとどうか。
学ぶ姿勢を忘れた時か。
それとも好奇心を失った時か。
的は得ている、だがピンと来ない。
あの時のまばゆい程のエネルギーはどこへ行ってしまったのだろう。
今では同じような光を見ると疎ましく思ってしまう。
その根源には妬みがあるだろうことも薄々感づいている。
卑しくなってしまったものだ。
古い厨房にこびりついた油汚れのように、まとわりつく物が自分の心を覆っているのが分かる。
あの頃の輝く心はまだ潜在しているのだろうか。
分からないまま長い時間を過ごしてきてしまった。
積み重なって層になっていく汚れを見て見ぬフリをして。
もうやめよう。
まずは汚れを取り払おう。
それが積年の汚れと同等の年月がかかろうとも。
内に秘めた久しく見ぬ自分に再び出会うために。